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  7. 仕訳の覚え方

仕訳の覚え方

仕訳の基本をゼロから理解する --

目次

  •  1. はじめに 
  •  2. まずは誰でもわかる話から 
  •  3. 「売上」「費用」っていつのこと? 
  •  4. 現金の動きも知りたい 
  •  5. 取引を分解してみる 
  •  6. 気づきのポイント:必ず「2つ」動く 
  •  7. 全体を通して見てみる 
  •  8. 仕訳の形式が生まれた理由 
  •  9. 預金を基準に左右を決めていく 
  •  10. 5つの分類とホームポジション 
  •  11. 貸借対照表(BS)と損益計算書(PL) 
  •  12. 正式な会計用語との対応 
  •  13. まとめ 

--- はじめに

「借方・貸方」「仕訳」と聞くと、なんだか難しそうに感じませんか?

この文章では、会計の専門用語をできるだけ使わずに、なぜ仕訳というものが重要になったのか、そしてなぜあの独特な形式になっているのかを、順を追って説明していきます。

専門用語は最後にまとめて紹介しますので、まずは「考え方」を理解することに集中してください。

読み終わる頃には、仕訳の形式が「覚えるもの」ではなく「自然とそうなるもの」として理解できるようになるはずです。

--- 1. まずは誰でもわかる話から

利益の計算は簡単

商売の基本は単純です。

売上−費用=利益\text{売上} - \text{費用} = \text{利益}売上−費用=利益

100万円売り上げて、70万円の費用がかかったら、利益は30万円。これは誰でもわかります。

現金の動きも簡単

銀行の通帳を見れば、お金の動きもすぐわかります。

ある時点の残高 + 入金 - 出金 = 次の時点の残高

月初に50万円あって、30万円入金があり、20万円出金したら、月末は60万円。これも簡単ですね。

2. 「売上」「費用」っていつのこと?

ここで少し考えてみましょう。

売上はいつ発生する?

お客さんに商品を売るとき、売上が発生するのはいつでしょうか?

  • お客さんが「買います」と言ったとき?
  • 商品を届けたとき?
  • 請求書を送ったとき?
  • お金が振り込まれたとき?

費用はいつ発生する?

クレジットカードで本を買うとき、費用が発生するのはいつでしょうか?

  • ネットで注文ボタンを押したとき?
  • 本が届いたとき?
  • カード会社が銀行口座からお金を引き落としたとき?

なぜこれが問題になるのか

もし「お金が動いたときが売上・費用」というルールにすると、困ったことが起きます。

たとえば、12月に商品を届けたのに、「入金は来年1月でもいいですよ」とお願いすれば、今年の売上を来年に移せてしまいます。逆に、来年届く商品の代金を今年中に払っておけば、来年の費用を今年に移せます。

つまり、入金や出金のタイミングを調整するだけで、業績を好きなように見せかけられてしまうのです。

これはおかしいですよね。

お金の動きではなく「取引の実態」で記録する

そこで、会計ではお金の動きではなく、取引の実態に基づいて売上や費用を認識するというルールを採用しています。

  • 売上は、商品を届けた(サービスを提供した)ときに認識
  • 費用は、商品やサービスを受け取ったときに認識

お金がいつ動くかは関係ありません。

3. 現金の動きも知りたい

「取引の実態で記録する」という考え方はわかりました。でも、こんな疑問が浮かびませんか?

「じゃあ、現金がいくらあるかはどうやって把握するの?」

確かに、お金の動きに振り回されるのはよくありません。でも、現金がいくらあるかわからないのも困ります。

そこで、損益(売上・費用)と現金の動き、両方を同時に記録する方法があれば便利だと思いませんか?

実は、それが「仕訳」なのです。

--- 4. 取引を分解してみる

具体的な例で考えてみましょう。

例1:クレジットカードで1万円の本を買う

ステップ①:購入時(4月1日)

本が届いたとき、何が起きているでしょうか?

項目

変化

預金残高

変わらない

費用

1万円増える

カード会社への支払義務

1万円増える

ステップ②:引き落とし時(5月1日)

カード会社が銀行口座からお金を引き落としたとき、何が起きるでしょうか?

項目

変化

預金残高

1万円減る

カード会社への支払義務

1万円減る(消える)

例2:3万円の商品を売って後日入金される

ステップ③:商品引渡時(4月1日)

商品を届けたとき、何が起きているでしょうか?

項目

変化

預金残高

変わらない

売上

3万円増える

顧客からの回収予定

3万円増える

ステップ④:入金時(5月1日)

顧客がお金を振り込んでくれたとき、何が起きるでしょうか?

項目

変化

預金残高

3万円増える

顧客からの回収予定

3万円減る(消える)

5. 気づきのポイント:必ず「2つ」動く

上の例を見て、何か気づきませんか?

どの取引でも、必ず2つの項目が同時に動いています。

取引

動き①

動き②

本を購入

費用が増える

支払義務が増える

カード引落

預金が減る

支払義務が減る

商品を売る

売上が増える

回収予定が増える

代金入金

預金が増える

回収予定が減る

これは偶然ではありません。取引とは本質的に「何かを得て、何かを失う(または義務を負う)」ことだからです。

6. 全体を通して見てみる

5月1日の終わりに、この会社の状況を確認してみましょう。

損益の面

売上 3万円 - 費用 1万円 = 利益 2万円

現金の面

入金 3万円 - 出金 1万円 = 残高増加 2万円

支払義務と回収予定は、それぞれ増えて減って、プラスマイナスゼロになっています。

つまり、2つの側面を同時に記録していけば、損益も現金も両方把握できるのです。

7. 仕訳の形式が生まれた理由

この「2つの動きを同時に記録する」という方法を、もっとと使いやすくしたものが「仕訳」です。

仕訳の基本ルール

  1. 必ず左右に分けて書く(2つの動きを強制的に記録するため)
  2. 左右の金額は必ず一致させる(記入ミスを防ぐため)

左側

右側

===

===

金額の合計

金額の合計

必ず一致

必ず一致

なぜこの形式が優れているのか

たとえば、3万円の売上のうち1万円だけ現金で受け取り、残り2万円は後日入金の場合:

左側



右側



預金

1万円

売上

3万円

回収予定

2万円





合計

3万円

合計

3万円

左右の合計が一致するので、記入漏れや計算ミスがあればすぐにわかります。

もし仕訳の形式がなかったら?

単純にメモ書きで記録すると、こうなるかもしれません。

4/1 売上3万円あり。1万円は現金、2万円は後で入金予定。

これだと、後から集計するとき大変です。「現金がいくら増えたか」「回収予定がいくらあるか」を一つ一つ文章から読み取らなければなりません。

仕訳の形式なら、同じ種類の項目を縦に足していくだけで集計できます。

8. 預金を基準に左右を決めていく

さて、仕訳では何を左に書き、何を右に書くのでしょうか?

ここでは、預金を基準にして、1つずつ具体的な取引から確認していきます。

出発点:預金が増えたら左、減ったら右

まず、預金が増えたら左側と決めます。これだけは「そういうもの」として受け入れてください。

では、預金が減ったときはどうするか?

「左側にマイナスの金額を書く」という方法もありそうですが、仕訳では右側にプラスの金額を書くことになっています。

なぜでしょうか?

たとえば、1ヶ月間に以下の取引があったとします。

4/1  預金 +10万円4/5  預金 -3万円4/10 預金 +5万円4/20 預金 -2万円

月末の預金残高を知りたいとき、マイナスが混在していると、こう計算することになります。

10−3+5−2=10万円10 - 3 + 5 - 2 = 10\text{万円}10−3+5−2=10万円

これでも計算できますが、「入金の合計」と「出金の合計」を別々に知りたいときは、もう一度見直す必要があります。

一方、増加を左、減少を右と分けて書くと:

左側(増加)

右側(減少)

10万円

3万円

5万円

2万円

合計 15万円

合計 5万円

こうすれば、入金合計15万円、出金合計5万円、差引10万円と、すべての情報が一目でわかります。

これが「減ったら反対側に書く」理由です。

預金が増える → 左側に「預金」と書く預金が減る   → 右側に「預金」と書く

ここから、他の項目がどちら側になるかを1つずつ確認していきましょう。

取引①:商品を現金で売った

3万円の商品を売って、すぐに現金で受け取りました。

何が起きた?

  • 預金が3万円増えた
  • 売上が3万円あった

仕訳にすると:

左側





右側



預金

3万円



???

3万円

預金が増えたので左側に書きました。では売上はどちら?

左右の合計は一致しなければなりません。預金が左に3万円あるので、売上は右に書くしかありません。

左側





右側



預金

3万円



売上

3万円

✔ 確認:売上は右側に書く ---

取引②:商品を現金で仕入れた(費用を払った)

1万円の商品を仕入れて、現金で支払いました。

何が起きた?

  • 預金が1万円減った
  • 仕入(費用)が1万円発生した

仕訳にすると:

左側





右側



???

1万円



預金

1万円

預金が減ったので右側に書きました。では仕入(費用)はどちら?

左右を一致させるために、仕入は左に書くしかありません。

左側





右側



仕入

1万円



預金

1万円

✔ 確認:費用は左側に書く ---

取引③:商品売ったが、代金後日入金

3万円の商品を売りましたが、代金は来月振り込んでもらう約束です。

何が起きた?

  • 預金はまだ動かない
  • 売上が3万円あった
  • 顧客からの回収予定(将来お金をもらえる権利)が3万円できた

仕訳にすると:

売上は右側でしたね。では回収予定はどちら?

左側

右側

??? 3万円 売上

3万円

左右を一致させるために、回収予定は左に書くしかありません。

左側

右側

回収予定 3万円 売上

3万円

確認:回収予定(将来もらえる権利)は左側に書く




取引④:回収予定が入金された

取引③の代金3万円が、銀行口座に振り込まれました。

何が起きた?

  • 預金が3万円増えた
  • 回収予定が3万円なくなった(回収できたので)

仕訳にすると:

左側

右側

預金 3万円 ???

3万円

預金が増えたので左側に書きました。回収予定が減ったのでどちらに書く?

左右を一致させるために、回収予定は右に書きます。









--

--

左側

右側

預金 3万円

回収予定 3万円

✔ 確認:回収予定は、増えるときは左、減るときは右

取引⑤:商品を仕入れたが、代金は後払い

1万円の商品を仕入れましたが、代金は来月払う約束です。

何が起きた?

  • 預金はまだ動かない
  • 仕入(費用)が1万円発生した
  • 支払義務(将来お金を払う義務)が1万円できた

仕訳にすると:

費用は左側でしたね。では支払義務はどちら?

左側

右側

仕入 1万円

??? 1万円

左右を一致させるために、支払義務は右に書くしかありません。

左側

右側

仕入 1万円

支払義務 1万円

✔ 確認:支払義務(将来払う義務)は右側に書く

取引⑥:支払義務を支払った

取引⑤の代金1万円を、銀行口座から振り込みました。

何が起きた?

  • 預金が1万円減った
  • 支払義務が1万円なくなった(支払ったので)

仕訳にすると:

左側

右側

----

----

??? 1万円 | 預金 1万円

預金が減ったので右側に書きました。支払義務が減ったのでどちらに書く?

左右を一致させるために、支払義務は左に書きます。

左側

右側

支払義務 1万円

預金 1万円

確認:支払義務は、増えるときは右、減るときは左

取引⑦:銀行からお金を借りた

銀行から50万円を借りて、口座に入金されました。

何が起きた?

  • 預金が50万円増えた
  • 借金(将来返す義務)が50万円できた

仕訳にすると:

左側

右側

預金 50万円

??? 50万円

預金が増えたので左側に書きました。借金はどちら?

左右を一致させるために、借金は右に書くしかありません。

左側

右側

預金 50万円

借金 50万円

確認:借金(返す義務)は右側に書く

支払義務と同じですね。「将来払う義務」「将来返す義務」は、どちらも右側です。

取引⑧:借金を返した

銀行に50万円を返済しました。

何が起きた?

※回答内容が保存され、問題作成者が閲覧できます